マイクロ法人を運営していると、当初の資本金では足りない状況になることがあります。資金調達しないと債務超過となりますので金策が必要です。マイクロ法人では役員個人から法人へ資金を貸し付ける(法人の立場では、役員個人から資金を借り入れる)ことが一般的に行われているようです。私の体験を参考に共有します。(念のため、当方は専門家ではなく、私の体験談という位置づけになります。)
そもそもどんな手続きが必要なのか?
個人から法人にお金を振り込むだけでよいのか? という点について、ググったところ以下のように金銭消費貸借契約書が必要という記述が多数見つかりました。
個人が法人にお金を貸す場合
個人が法人にお金を貸した時に金銭消費貸借契約書がなければ、その行為は贈与とみなされるおそれがあります。
贈与とみなされると個人の側には貸したお金が「みなし譲渡課税」の対象とされ所得税が課税されます。一方、法人の側では借りたお金が「無償による資産の譲受け」とされて法人税の課税対象となってしまうのです。
個人が法人にお金を貸す時には必ず金銭消費貸借契約書を作成しましょう。
http://www.office-kanju.jp/15952236076243
ということで、贈与ではなく貸しているということを証するために、金銭消費貸借契約書を作成することにします。
金銭消費貸借契約書の作成
「金銭消費貸借契約書 テンプレート」のようなキーワードでググると、いろいろとサンプルが見つかると思います。自分に合いそうなものを参考に作成するとよいと思います。
考慮が必要なのは、利息、返済期限だと思います。
利息
個人から法人への貸付の場合は利息をとる必要なないようです。上で紹介したサイトに記述がありますので引用しておきます。
個人が法人にお金を貸す場合の利息はどうなるのか
個人が法人にお金を貸す際に利息をとる必要はありません。個人は利益を追求して動く存在ではないので利息をとることについては、その人の自由意志に任されているからです。また、利息をとらないことに関して税務上の問題は個人、法人ともにありません。
http://www.office-kanju.jp/15952236076243
どうしても利息を取りたい場合は、それなりに手続きが必要そうです。上記サイトに記述があるので参考にしてみてください。
返済期限
無期限だと贈与とみなされる可能性があるので、期限を明記しておいたほうがよいそうです。どこかのサイトに10年とか15年という記述があったので、私の場合は15年後の日付を記載しておきました。(ソース失念しました。すみません。)
収入印紙代を節約する (電子契約を試してみる)
収入印紙の必要性
金銭消費貸借契約書を作成する場合、収入印紙を貼り付ける必要があるようです。印紙税法第8条が根拠となっているようです。
100万円以下で千円、500万円以下で2千円、1千万円以下で1万円とそれなりに高額です。
電子契約にすることで収入印紙代を節約する
なんとかして節約できないかと考えたところ、電子契約にして電子署名すればよいのでは、と思いつきました。(サラリーマン時代のIT技術者としてのノウハウが役に立ってます。)
以下のブログに金銭消費貸借契約書の電子化について記述があり、分かりやすいです。
電子契約サービスの選定
以下の比較記事が参考になりました。
多くの会社でお試し用に無料枠があり、電子契約の件数が範囲内に収まっていれば無料枠で十分です。私はfreee会計を契約していることからfreeeサイン(旧NINJA SIGN)を使ってみました。
契約書の後文を電子契約に沿った内容に変更する
サンプルとして見つかった契約書のほとんどは、最後のほうに以下のように記載されていると思います。
本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各自記名押印の上、各1通を保有する。
この記載は契約書の後文というそうです。この記載内容は紙での契約を前提としており、電子契約にはそぐわないため、変更が必要です。以下のサイトに本テーマについて詳しく説明がありますので、参考にして後文を変更しましょう。
金銭消費貸借契約書の内容(参考)
私が作った金銭消費貸借契約書の内容を参考に共有します。(Wordファイルの共有は個人情報漏洩リスクがあるので、テキスト共有となります。すみません。)
金銭消費貸借契約書 貸主 (以下「甲」という。)、借主 (以下「乙」という)は、以下のとおり金銭消費貸借契約(以下「本契約」という。)を締結する。 第1条(金銭消費貸借) 甲は、 年 月 日、金 円を貸し渡し、乙は、同日これを借り受け受領した。 第2条(利 息) 本契約において利息は、無利息とする。 第3条(弁済期・弁済方法) 乙は、甲に対し、第1条の借入金 を 年 月 日限り甲の指定する銀行口座に振り込む方法により返済する。ただし、振込手数料は乙の負担とする。 第4条(期限の利益喪失) 乙は、次の各号の一に該当する場合、甲の催告を要せず当然に期限の利益を失い、直ちに元金および利息の弁済をしなければならない。 (1) 本契約に基づく債務の履行を怠ったとき (2) 仮差押え、仮処分、競売、強制執行または滞納処分を受けたとき (3) 破産手続、民事再生手続、会社更生手続または特別清算手続の申立てを受けたとき (4) 手形交換所から取引停止処分を受けたとき (5) 甲に通知をすることなく住所を移転させたとき 第5条(遅延損害金) 乙は、期限後または期限の利益を喪失したときは、その翌日から支払い済みまで、残元金に対する年3%の割合による遅延損害金を支払う。 本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、甲乙合意の後電子署名を措置し、各自その電磁的記録を保管する。 貸主(甲) 借主(乙)
電子契約サービスの使い方
私が使ってみたfreeeサインを例にしますが、freeeサインのチュートリアル動画を見るのが分かりやすいと思います。(この記事で詳細の説明は割愛します。)
電子契約する際に署名を入れたい部分(上記の契約書例の最後の貸主、借主の右側部分)に、入力項目のオブジェクトを配置する感じです。印鑑はなくてもよいので対象から外して、住所、氏名、会社名があればよいと思います。他に注意が必要なのは、借りる側の法人が乙になり、貸す側の個人が甲になるため、署名者1と署名者2の配置を間違えないようにしましょう。
【2022/10/2追記】署名者1、署名者2の配置イメージを追加しました。
(2023/01/31更新:上記の署名者2の項目配置イメージの画像を差し替えました。freeeサインのアップデートによりテキストボックス配置の操作性が大幅向上しています。)
署名が完了した後にPDFファイルを開くと、署名済である旨が表示されます。
freee会計での仕訳(長期借入金対応) [2023/01/12追記]
freee会計ではデフォルトで「役員借入金」という勘定科目が存在しますが、小分類が他流動負債となっています。この勘定科目をそのまま使った場合、決算書を作成すると流動負債(=1年以内に返済期日が到来する借入金)扱いとなってしまいます。
今回は1年以上の固定負債扱いとしたいので、「役員長期借入金」という勘定科目を新規に作成し、それを使ってfreee会計に入力するようにします。
freeeヘルプセンター:勘定科目の設定・追加を行う → 勘定科目を新規登録する
- [設定]→[勘定科目の設定]から「+新規作成」をクリックします。
- 以下のイメージのように設定し、保存をクリックします。
3. 勘定科目の一覧に、登録した勘定科目が追加されます。
4. 取引の登録をすると、以下のような仕訳になります。(金融機関と連携していれば自動で経理画面からの登録になると思います。)
5. 決算書を作成すると、固定負債に分類されることが確認できます。
まとめ
マイクロ法人で法人が役員個人から借り入れる場合に、後で問題が出ないように金銭消費貸借契約書を作成する手順を、印紙代を節約するために電子契約で実践した内容の共有でした。印紙税を払うのはもったいないので、電子契約で経費削減できたのはよかったです。
なお、電子契約は金銭消費貸借契約書以外にも応用できますが、件数が多くなると無料枠の範囲を超えるので注意が必要です。複数の電子契約サービスを使ってもよいと思います。
さんしぐのプロフィール
さんしぐ です。40代でのFIREを2022年1月に達成。FIRE関連の情報等を発信したいと思います。2級FP技能士、IT技術者、INTP。